不便な便利屋?
「使ってみれば意外と簡単でとても便利なスマホを、年輩の方がよく『難しそうだから自分には無理』と言って使おうとしないのと同じですね。」
前回、鈴木先生が「公式を導いてみることの重要性」についてお話されました。
全くその通りです。例えば高校数学の「三角関数」の分野では、基本となる加法定理を前提として、「2倍角」「3倍角」「半角」「合成」「和→積」「積→和」の各公式は最低限自力で導き出せるようにしなければなりません。
そして大切なのは、自然と『覚えてしまう』ほどに繰り返し導き出すことです。誤解しないでくださいアクセントは『覚えてしまう』ところにあります。
実際の入試の場面で、公式をいちいち導き出している余裕はありませんし、また公式が頭に入っているからこそ解き方を思いつくことも多いのです。
特にこの時期よくある質問は、
「解の公式は、1番目の公式を覚えておけば、2番目の公式を覚える必要はあるのですか?」というものです(判別式も同様の質問を受けます)。
私は当然、「2番目の公式も覚えてください」と答えます。
2番目の公式を覚えて使いこなすことができれば、計算が簡単になり、スピードもアップし、そして何よりも「計算ミスの削減」につながります。
中には「覚えられないなら覚えなくてもいい」とか、「2番目の公式で計算ミスをするといけないので、1番目の公式を使ったほうがいい」という人もいるようです。
しかし、英単語の量に比べれば、数学の公式の数は圧倒的に少なく、繰り返し使っていれば覚えられないことなどありません。
また、例えば、本格的にテニスを始めた子供に対し、「オーバーヘッドサーブが入らないなら、アンダーサーブでいいよ」とは言わないのではないでしょうか。上からのサーブが入らなければ、入るように練習させるのが普通だと思います。
大切なのは、2番目の公式を使いこなせるようになるまで、繰り返し演習させることです。
数学の公式は、体の一部になるほどに繰り返し使い続けてください。
冒頭のセリフは、そうやって公式を使いこなせるようになったある高校生のひと言です。
あまりにも言い得て妙だったので、思わず「そうだね」と笑ってしまいました。
以上、学長でした。
(タイトルの「不便な便利屋」は、テレビ東京系で2015年4月から放送された、岡田将生さん主演のドラマのタイトルです。私はけっこうハマってしまって、それ以来「不便」という言葉を耳にするとこのタイトルが頭をよぎるので思わず使ってしまいました。)
関連記事