『発見』の裏に・・・

鈴木です。

脳科学者の池谷裕二さんが「薬の開発のために脳をきわめる」(岩波書店編集部『いま、この研究が面白い』所収)でこんなエピソードを紹介しています。

齋藤洋教授(当時:東京大院薬学研究科教授)は嘔吐の研究で国際的な知名度を誇っていました。
理由は「嘔吐する小型動物」を発見したからです。これは何が画期的だったのでしょう?
実は、薬学の実験でよく使うラットやマウスは「吐かない」動物です。吐くための脳回路がないそうです。
つまりそれは「吐き止め薬」の実験でラットやマウスが使えないことを意味します。
そのかわりにイヌやネコを実験台として使うわけですが、こうした大型の動物は大規模な飼育施設を必要とし、試薬も多くの量を必要とします。
ですから嘔吐の研究の現場では「小型で嘔吐する動物」が必要とされていました。
そんな中、齋藤教授は当時スンクスと呼ばれる体長15㎝ほどの嘔吐する動物を発見しました。
このことを発見したとき、齋藤教授は「スンクスは吐くぞ!」と興奮ぎみに言いました。しかし周囲の人々は「何をいまさら」といった感じで「そりゃそうですよ」と答えたそうです。

この時、齋藤教授と周囲の研究者の違いは何だったのでしょう?
それは「問題意識」をもっていたかどうかである、と池谷さんは言っています。
齋藤教授は、嘔吐の研究には今どんな問題があって、その問題を解決するには何が必要なのかを常に意識していました。一方、他の研究者にはその意識が欠けていました。
ですから他の研究者たちはそれまで何度もスンクスが吐くのを見て知っていましたが、それがどれほど重要な意味を持っているかに気が付かなかったのです。

目の前に見えているモノはみな同じです。しかしただ見るだけでは発見ではありません。目の前に見えているモノの重要性に気づいてこそ、新しい価値を発見することにつながります。重要性に気づくためには「問題意識」をもっていなければなりません。そしてそのためには努力と勉学の蓄積が必要です。

私自身、十数年中学生の指導に携わらせていただいておりますが、まだまだ発見の毎日です。生徒に指導する以上、自身も日頃の努力と勉学を重ね、新しい価値の発見を探求する姿勢を持ち続けなければならないことを、再認識させてくれるエピソードでした。


(スンクスはこんな感じのネズミににた小動物です)
  


2016年05月23日 Posted by クレドアカデミー at 13:22中等部☆指導風景